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惑星 デジャブ 10

達郎は指示に従ってシステムを切り離す作業をしているフリをしながら、今まで何度も繰り返された父親とのやり取りを思い出していた。

数々の殖民惑星でちょっとしたトラブル、しかも達郎の仕事にわざとちょっかいを出すような騒動を起こしては
最後に例の仮面を取り外し「実は…私はお前の父親だったのだ。息子よ!」というのがお気に入りの展開だった。
整備された都市を植物だらけにしたこともあった。
恒星間輸送船をハイジャックして積荷をおかしな生物に全部すりかえた事もあった。
幸い、そのおかしな生物は、目的地の惑星の住民が悩まされていた病原体に対して殲滅させる効果があり
父はハイジャック犯から一躍ヒーローとなった。
そして今回も、この新エネルギーシステムが稼動すれば、この星は飛躍的な発展を遂げるのは間違いない。
空間シールドも、小惑星群の中で作業するのに使えそうだ。
何時もより規模が大きかったが、結局の所、そんなに大した被害はでないどころか、上手く利用すれば人類にとっても、中州玄界灘重工にとっても有用な技術ばかりだ。

「…父さんは何をしたいんだろう。私と遊びたいだけ、自分の技術力をひけらかしたいだけ…そうとばかり思っていたが。」

達郎の手が止まっているのをエスメラルダが見逃すはずはなかった。
「何をしてるの?!さっさとやりなさい!さもないと田中博士の命はないわよ」
父親…田中博士は縛られた状態でエスメラルダの足元に転がっていた。時々蹴りを入れられている。


山際というのは達郎の母親の姓だ。
本名は田中達郎。現在の惑星間航法の原理を発見した人物の田中博士は彼の父親である。
相棒のボブと共に莫大な利益を得た田中だったが、彼もボブも長らく伴侶を得る事はなかった。
ボブはアニメ美少女とフィギュアがあれば満足する男だったが、田中の場合は単に研究に没頭しすぎたからである。
田中が六十にならんとするある秋の日。出会いは突然訪れた。田中が出入りしていた研究施設に「山際アカリ」という環境工学の研究者が着任したのだった。
その日から田中の猛アタックが始まった。後にボブの書いた回想録によると「まるで発情期のセイウチの求愛行動」のようだった。
彼女もまた、婚期を逃し、研究に一生を捧げるつもりでいたのであるが、彼の傍から見たら異様な猛アタックに何か引かれるものがあったのだろうか、素直にその求愛を受け入れたのだった。

アカリ45歳の誕生日の事である。
田中は、アカリの為に身体機能を若返らせる画期的なシステムを開発し、プレゼントしたのである。
最初は上手く機能しているかに思えた。
年齢のせいか疲れ気味だった体調が良くなり、肌のハリがよくなり、しわが無くなった。
ところが、二週間ほどたったころである。気がつくとアカリは二十歳近く若くなっていた。
忙しかったのと、連日徹夜で研究室にこもっていても疲れないほど調子が良くなったおかげで、鏡を目にする時間もなかったのである。その間に、アカリは異様なまでの若返りを遂げていた。
「…これは…どういうこと?」アカリは夫に報告する為に自宅に併設されている田中ラボに駆け込んだ。
だが、そこでも異常事態が起こっていた。
新しいアイディアを形にする為に作業室にこもっていたのだが、彼も、疲労回復の為に同じシステムを利用していたのである。
田中も四十代前半の働き盛りだった頃に戻っていた。
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by denjiroo | 2010-09-22 16:19 | 製作