惑星 デジャブ 4

その穴は、丁度、螺旋階段のような形状だった。
「山際さん。ちょっと眼をつぶっててくれ。俺がいいというまで開けるんじゃねぇぞ。」
そう言うとミナミはメインエンジンを切り、魚群探知機の表示モードを3Dに切り替えた。
眼を閉じるとかえって他の感覚が鋭敏になるのか、小刻みな振動が山際の体内まで響いてくる。
宇宙空間では音が伝わらないが、おそらくミナミはサブエンジンを何度も起動したり停止させたり、あるいは逆噴射させることで少しずつ回転させながら進んでいるのだろう。
演歌は既に止まっていた。ただ、計器類が時折立てるビープ音だけが船内に響いていた。

どれくらいの時間が経ったのだろう。
「もう眼を開けてもいいぜ。それからすぐに着陸態勢に入ってくれ。」
眼を開けると眼下には雲に覆われた第四惑星の姿が迫っていた。あと少しで重力圏内にはいるかというギリギリのラインのようだ。
「…上下感覚のない宇宙空間だが、あれだけ大きな目標物が目の前にあれば、回転を意識しちまうからな。」
俺はなれてるけどよ、と付け加えると、ミナミは宇宙服用ヘルメットをかぶり、操縦を着陸用モードに切り替えた。
「着地点はどこにする?赤道付近で一番適当なのはアカバネ諸島の辺りだが。」
「お任せします」監視されてる以上、何処に着陸しても同じだ。
「よし来た。まかせろ!」

やがて強烈なGが襲ってきた。



「狭い~地球に未練はないがぁ~ お乳~欲しがるこの子は可愛い~♪」
上機嫌なミナミの歌に合わせるかのように、船体は揺られながら波間を進んでいた。
「ミナミさん、いつもながらの見事な着陸でした。それでは”イベント”が終わり次第まだご連絡いたします。確か、上空で待機されるとの事でしたが…」
「いや。気が変わった。今回は俺も上陸する。」
「しかし、体の方は大丈夫なのですか?」
「重力の事か。最近体が鈍っちまってよぉ。ちょっと地表に降りると体が重くってしょうがねぇ。ステーションにも疑似重力はあるが、やはり本物にはかなわねぇ。リハビリついでに、女房への土産でも探してその辺をうろついてるぜ。」
「…わかりました。それでは、なるべく私とは接触しないよう、お気をつけください。狙いは私だけなのですから。」
「おぅ。だが、必要となったらいつでも呼んでくれ。」
「ありがとうございます。」
アカバネ諸島の中心、アカバネ島の港街でミナミと別れると、山際はそのまま島の繁華街へ向かった。
そして、繁華街の中ほどの道端で立ち止まった。
惑星周辺が異常事態になっている割に、人々は落ち着いた様子で、普段通りの生活をしているようだった。
その雑踏の中で、山際は身動きもせず立ち続けた。
そして30分後。
暴走する乳母車と、「だれか止めてー!」と叫びながらそれを追いかける髪の長い少女の形をしたものが現れた。
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by denjiroo | 2010-07-28 11:43 | 製作

これまで、日々の雑感を書いておりましたが、鑑定士になりましたので伊勢流五行陰陽学に関連することも書いていきたいと思います。


by denjiroo
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