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惑星 デジャブ 7

山際は少々面食らっていた。
この黒子は20世紀の漫画が元ネタだろうし、女性のレオタード姿もやはり20世紀の特撮作品を踏襲したものだろう。
どれもこれもあいつの懐古趣味に合わせて作られたもので、いつも通り、お約束の展開になるはずと踏んでいた。
そして序盤は、「人間に見えるけど実はアンドロイドだった」というオチの為に女性型アンドロイドが山際に近づいてくるのがいつものパターンだった。
大抵は外装がティーンエイジャータイプであるのも特徴だった。
エスメラルダと名乗った女性は生身の人間だという。そうであれば、見た限りでは年齢は山際と同じかやや上だろう。
あいつの趣味ではなさそうだ。少なくともアンドロイドに関しては。
だが、もしかしたらサイボーグかもしれない。
「サイボーグが善と悪の狭間で苦しむ」というパターンだとしたら少々やっかいだ。
あいつの趣味はあらかた知り尽くしているが、流石に何度も同じでは飽きてきたのか。

山際の苦悩を察したのだろうか。
「私はアンドロイドでもサイボーグでもロボットでもありませんよ」とエスメラルダが微笑んだ。
「ですから」とエスメラルダは先ほど受け取った山際の名刺を取り出すとそれを破り捨ててしまった。
「対アンドロイド用妨害電波発信装置は必要ありません。」
山際は、たじろいだ。「今回は、あいつが仕組んだ壮大な悪ふざけでは無かったのか。」
その時。山際の通信ボードに着信が入った。ミナミからだ。山際はハンズフリーモードに切り替えた。
どうせ聞かれてしまうのだ。
「…はい、お待たせいたしました。お世話になっております。山際です。」危険が迫っている時でもつい仕事モードの口調になってしまう。
「ああ、山際さん。俺だ。ついさっきなんだが、惑星のシールドが全面解除された。」
「…なんですって?それでは…」
「第五惑星に配置されている機動隊が数時間後には到着するだろう。博士も年貢の納め時って事だな」
「そうですね。ところでミナミさん…」
通信が切断された。いつの間にか回りには黒子軍団が多数迫っていた。
エスメラルダは微笑みながら通信ボードを取り上げてしまった。
そして、「申し訳ございません。そういう事ですからあまり時間がありませんの。一緒に来て下さいますね。」と言うや否や、山際を縛り上げてしまった。
あまりにも礼儀正しいので、山際は相手を仕事関係の人間のように錯覚していたが、エスメラルダは敵側の人間だった。やはり人間はアンドロイドのようには行かない。
山際は黒子の運転する車に押し込まれると、何処かに連れ去られてしまった。
by denjiroo | 2010-08-02 19:33 | 製作

これまで、日々の雑感を書いておりましたが、鑑定士になりましたので伊勢流五行陰陽学に関連することも書いていきたいと思います。


by denjiroo
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